日本国内で約51万人。世界中で2億3千万人。そしてその数は年々増加している。
アトピー性皮膚炎の患者数だ。
膨大な患者が存在する疾患でありながら、治療法に誤解が多いのがアトピーの特徴と言えるだろう。
その誤解を解くべく、最新の研究から得られたアトピー治療の最前線をまとめた本が出版されたので紹介したい。
なぜ僕がアトピー関連の本に興味を持つかと言うと、僕も妻もアトピーで、その遺伝子が掛け合わさって娘もアトピーなのだ。
娘は生後すぐに顔の荒れがひどくなり、ほっぺたがジュクジュク状態だった。当然のごとくアトピーを疑い皮膚科に行った。
最初に訪ねた皮膚科では、70歳のおばあちゃん先生の診察。
「ステロイド外用薬はなるべく使わないようにしましょう。使うとしても薄く塗るように。」
僕の小さい頃もステロイドは危ないから、なるべく使わないようにと言われた記憶があった。そこで僕らは、先生の方針にしたがってステロイドを使わず保湿クリームばかり塗っていた。
そしてどうなったか。こまめにクリームを塗っているはずなのに、娘の状態は全然良くならなかった。むしろ悪化していき、寝ている間に掻いてしまって血が出てしまうこともあったのだ。
おばあちゃん先生は知識をアップデートできているのだろうか?
そう疑問に思い始めた僕らは別の皮膚科を訪ねることにした。
次の病院で会ったのは若い女医先生。娘の肌を見せ、ステロイドをほとんど使っていない事を説明すると、いきなり怒られた。
「それは昭和の治療法よ!!」
今はステロイドを使って肌荒れをコントロールするのが主流というのだ。
なぜ患者が怒られるのか分からないし、僕らのこれまでの対処が昭和的と言われてとても困惑した。
けれど多くの男性がそうであるように(偏見?)、僕も若い女医先生に怒られるのは嫌いではない。
そんなわけで女医先生のもとに通い、しつけに従ってステロイドを使っていくと、娘の肌は段々とキレイになっていったのだ。
4歳になった今、ジュクジュクした肌荒れは跡形もない。そんな肌を見るたびに、自分が熟女好きじゃなくてホントに良かったと思っている。
さて、アトピーなんて子供の頃に肌がちょっと荒れるだけだろ?なんて思っている人もいるかもしれない。
だが経皮感作というやっかいな現象がある。
僕らの身体では、口から入った食べ物は安全だと認識されるのだが、肌荒れした皮膚から侵入してきたものは異物だと認識するメカニズムがある。
近年の研究では、この経皮感作が食物アレルギー発症の大きな原因である考えられている。
僕の娘は2歳の時にピーナッツアレルギーであることが分かった。
当時の肌荒れがピーナッツアレルギーに繋がったかは分からない。けれど、正しい治療法を知っていれば、、、と思わずにいられないのだ。
そんな僕がもっと早く出逢いたかった本。それがこれだ。
筆者は京都大学医学部の准教授で、これまでに1万人以上のアトピー患者を診察してきたアトピー治療の専門家である。
ただし、この本は筆者の経験だけを基に書かれたのではない。学術論文100本以上を参考文献として挙げ、アトピー治療に関する最新の情報が記載されている。
適切な治療法が書かれているのはもちろん、この本には他にも僕らが知りたかったことが書いてある。
なぜアトピー治療に誤解が多いのか。
皮膚科医ならではの視点が書かれている。僕が体験した様に、先生によってなぜ治療法が異なるのか、なぜステロイドは恐れられていたのか。怒る先生がなぜいるのかなんて事も書いてある。この本のおかげで僕は背景を理解できた。
そしてもう一つ。
インターネットやTVに出てくる民間療法に効果はあるのか。
アトピーの治療法を検索すると、色々な方法が引っかかってくる。それら一つ一つの有効性を学術論文を引用して解説してくれる。
この本を読めば、適切な治療法だけでなく、不適切な治療法の知識も身につける事ができるのだ。
アトピー患者本人だけでなく、その家族にも、最初に読むべき本としてオススメしたい一冊だ。
本記事は下記クラブのご協力を得ています。
面白い文章を書けるようにするクラブ - CAMPFIRE (キャンプファイヤー)