サイエンスの香りがする日記

実体験や最新の科学技術をコミカルに綴ります。

考古学者は5万年前の人々の行動をどうやって明らかにしたのか。

 

時を遡ること5万年前。人類発祥の地と呼ばれるアフリカ大陸。当然ですが、インターネットもなければ、電話もありません。それでもアフリカ東部と南部という3000 km以上離れた場所に住んでいた部族が交流していた。

 

そんな興味深い考古学の調査結果が出ています1,2)

 

3000 kmというのは日本列島の長さに匹敵します。北海道と九州の人たちが電話も無しにコミュニケーションしていたと聞けば驚くでしょう。まぁ、日本の場合は間に海があるから例えが悪いですが。

 

それはさておき、5万年も前の人々の行動をどうやって考古学者は調べたのでしょうか。

 

タイムマシーンはもちろんありません。

 

古代の手紙が残っていたのでしょうか。

 

洞窟に壁画が残っていたのでしょうか。

 

そうではありません。

 

実は、ダチョウの卵を解析したのです。



 

アフリカでは古代からダチョウの卵の殻を様々な目的で使っていました。水を入れる器にしたり、装飾品を作ったり3)。そういったものがアフリカの遺跡では見つかるわけです。これまでにも、発掘されたダチョウの卵を解析した考古学の論文がいくつか出ています4,5)

 

今回の論文では、ダチョウの卵で作ったネックレスのビーズに着目しています。

 

6)

 

ダチョウの卵を小さいドーナツ形状のビーズに加工して、それを繋げたネックレスです。写真で分かるように、かなり精巧ですね。

 

論文ではまず、発掘された地層やその他の分析結果から、ビーズを発掘場所と製作された年代で分類しました。そして、そのビーズの形状を測定したのです。

 

するとどうでしょう、5万年前に東アフリカと南アフリカで作られたビーズは、その形状がミリメートル単位で一致したのです。

 

そもそもビーズはドーナツ形状である必要はないし、大きさだって千差万別でも不思議ではありません。それなのに形状が一致しているわけです。

 

ビーズの形状は、人々の文化の影響が出るでしょうから、発掘地域の間で交流があっただろうと推測できます。

 

まぁ、そうは言っても、

 

形状の一致くらいで交流があったなんて思えないな。

 

そう考える人もいるでしょう。

 

そういう人は、いったん論文の話題から離れて、目をつぶって想像してみて下さい。

 

君は高校の教室に座っています。

 

隣の席には君が想いを寄せている吹奏楽部の女の子が座っている。恥ずかしがり屋の君は、その気持ちを告げられず、できることと言えばチラチラと彼女を見ることだけだ。

 

ある日、数学のテストの時間。君は恐ろしいものを目にする。

 

同じクラスメイトのサッカー部のキャプテンのイケメンと、君の大好きなその女の子が左手に全く同じデザインの手作りミサンガを付けている。

 

どう思いますか?

 

ただの偶然だと思いますか?

 

クラスで2人の席がどんなに離れていようと、

 

お前ら付き合ってるだろ!

 

そう確信しますよね。つまりそういうことです。



さて、論文の話に戻りましょう。

 

5万年前の時点では東アフリカと南アフリカでビーズの形状が一致していました。ところが、3万年前から2千年前ごろに作られたビーズを見ると、サイズが全く異なってくるのです。そして再び2千年前以降になると、形状が近づいてきます。

 

付き合っていたカップルが、いったん別れたんだけど、再びよりを戻した。そんな事を想像できますね。

 

では、3万年前から2千年前には何があったでしょうか。

 

東アフリカと南アフリカの境界には、ザンベジ川という大きな川があります。気候変動をシミュレーションした研究によれば、3万年前から2千年前の間に、ザンベジ川の水量が増大して、川幅がかなり広がったようです7)

 

この影響によって東アフリカと南アフリカの交流が断絶したと推測されています。

 

一方、2千年前以降は、遊牧民の活動が活発化してきて、交流が復活したものと考えられています。

 

3000 kmも離れた東アフリカと南アフリカの部族は、気候の影響を受けながら、交流したり、断絶したり。交流範囲を時代によって変化させていたのでしょう。

 

ダチョウの卵でできたビーズという小さな発掘物から、古代の人々の行動をここまで推測する。考古学というのはロマンがありますね。



【参考文献】

  1. Miller, J.M., Wang, Y.V. Ostrich eggshell beads reveal 50,000-year-old social network in Africa. Nature 601, 234 (2022).
  2. Collins B.R., Hatton A., Beads reveal long-distance connections in early Africa. Nature 601, 199 (2022)
  3. d'Errico F., et al., Early evidence of San material culture represented by organic artifacts from Border Cave, South Africa. Proc Natl Acad Sci U S A 109(33), 13214 (2012)
  4. Miller J.M., Sawchuk E.A. Ostrich eggshell bead diameter in the Holocene: Regional variation with the spread of herding in eastern and southern Africa. PLoS One 14(11), e0225143 (2019)
  5. Stewart B.A., et al., Ostrich eggshell bead strontium isotopes reveal persistent macroscale social networking across late Quaternary southern Africa. Proc Natl Acad Sci U S A 117(12), 6453 (2020)
  6. https://www.shh.mpg.de/2080930/beads-social-network-africa
  7. van der Lubbe H.J.L. et al., Neodymium isotope constraints on provenance, dispersal, and climate-driven supply of Zambezi sediments along the Mozambique Margin during the past ∼45,000 years. Geochem. Geophys. Geosyst. 17, 181 (2016)

 

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リチャード3世の人生とは?古代ローマ人の食生活とは?同位体分析が考古学に新たな視点を与える。

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15世紀のイングランド王であるリチャード3世。

 

2014年の論文によれば1)、彼は幼児期をイギリス東部で過ごし、7,8 歳頃はイギリス西部へ。そしてその後、再びイギリス東部へと移動し、王様となったようです。

 

リチャード3世はシェイクスピアの作品に描かれたことで有名な人物ですが、この論文が出るまで彼の若い頃の行動はあまり分かっていませんでした。足跡を記した文献が残っていなかったんですね。

 

では、論文の筆者たちはリチャード3世の足跡をどうやって明らかにしたのでしょうか。



実は、彼の遺骨を同位体分析したのです。

 

歴史上の人物の足跡を明らかにする同位体分析

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図1 原子の模式図。

 

同位体というのは、同じ元素ですが、原子量が異なるものです。炭素原子だと、原子量12、13、14の同位体がありますね。

 

考古学で同位体分析と聞くと、炭素年代測定を思いつく人が多いでしょう。炭素年代測定では、放射線を出しながら崩壊していく“放射性”同位体を利用します。原子量14の炭素ですね。

 

一方、今回紹介したい技術では“安定”同位体を利用します。安定同位体放射線を出さず、半永久的に減少せずに存在します。例えば原子量12と13の炭素がそれです。

 

この安定同位体の存在量比である"同位体比"が計測対象になります。この同位体比というのは、同じ物質でも地球上の場所によって異なるのです。

 

例を挙げないと分かりづらいですよね。

 

例えば、酸素原子と水素原子で構成される水の場合、アメリカと日本の水では酸素の同位体比が異なる値になります。

 

なんでそうなるの?と思う人は参考文献2,3)を読んでもらうとして、ここではそういうものだと納得して先に進みましょう。

 

僕らが水を飲んだり、食べ物を食べたりすると、それらを構成する原子が僕らの身体の一部分になります。文字通りの意味で、”You are what you eat”なわけです。

 

つまり、アメリカの水を飲んで過ごした場合と、日本の水を飲んで過ごした場合で、僕らの身体の同位体比は変わってくるのです。逆に言うと、身体の同位体比を分析すると、どこに住んでいたかがある程度分かるということです4)

 

考古学では、この同位体分析を歴史上の人物の遺骨に適用するわけです。

 

さて、リチャード3世の話に戻りましょう。

 

リチャード3世の遺骨の同位体分析

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図2 リチャード3世5)

 

シェイクスピアが「リチャード3世の悲劇」の中で、背骨の曲がったヒキガエルという特徴的な男として描いたせいもあり、本当はどんな人で、どんな生活をしていたんだろうという研究が多く行われています。

 

リチャード3世の遺骨は2012年にイギリスのレスターで見つかっていて、背骨は曲がっていましたが、シェイクスピアの話ほどではなかったようです6)

 

そして2014年に出た論文では、リチャード3世の遺骨を同位体分析しています1)

 

論文では、酸素とストロンチウム同位体分析を行っています。ストロンチウムはカルシウムと化学的特性が似ているので、骨に取り込まれやく、同位体分析に良く使われます7)

 

上で書いたように、酸素の同位体比は飲料水の影響を受けますし、ストロンチウム同位体比は土壌の影響を受けます。両方の値を利用することで精度良く住んでいた場所の推測ができるのです。

 

では年代はどうやって調べたでしょうか。

 

身体の箇所によって構成する原子の入れ替わり速度が違うことを利用します。

 

例えば大腿骨は頻繁に原子が入れ替わるので、亡くなる直前の飲食の影響が現れています。一方で、歯のエナメル層は原子がほとんど入れ替わらないので、幼少期の状態が残っています。

 

論文では、リチャード3世の複数の骨や歯をそれぞれ同位体分析することで、生活していた場所と年代の関係を調べたのです。その結果として、最初に書いたようなリチャード3世のイギリス国内での行動を明らかにできたわけです。

 

 

さて、リチャード3世の話はこれくらいにして、もう一つ別の論文を紹介しましょう。こちらは古代ローマが対象です。

 

古代ローマ人の食生活とは。

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図3 古代ローマの食事。


2021年のScience Advance誌に掲載された論文によれば、西暦80年頃の古代ローマ人が摂取していたタンパク質のうち約25%が海産物由来であることが分りました8)

 

2000年近くも前の食生活をどうやって定量的に調べたのでしょうか。文献調査だけでは難しいですよね。

 

実は、遺骨の同位体分析よって故人の食生活まで調べることができるのです。

 

では分析手法の概略を説明していきましょう。

 

ここでポイントは、牛肉や魚など食べ物によって、それら自身の同位体比が異なることです。なんで?と気になる人はやはり参考文献2,3,4)を読んでほしいですが、簡単に言えば食べてるものが違うからです。

 

飲食物の原子が身体に取り込まれるという話を上でしましたね。家畜や魚も同じです。植物も同様で、地中から栄養を吸収しますから、そこに含まれる原子が取り込まれます。

 

何を食べるかによって、身体の同位体比が変化します。

 

そして僕ら人間で考えると、例えばステーキや焼き魚、そしてサラダをどんな配分で食べてきたかによって身体の同位体比が決まります。逆に身体の同位体比を調べれば、食生活をある程度推測できるのです。

 

もう一つ分析手法としてのポイントは、遺骨に含まれる20種類のアミノ酸を、種類ごとに同位体分析するところです。

 

食べ物によって炭素や窒素の含有率は違いますし、体内でのアミノ酸合成経路も異なっています。そういった情報も加味すると、古代の食生活を精度良く推定できるわけです9)

 

では、論文の話に戻りましょう。

 

論文では、古代ローマの港町ヘルクラネウムの遺跡で見つかった遺骨を同位体分析しています。そして、古代ローマ人穀物、陸上動物(肉や牛乳など)、海産物をどんな割合で食べていたかを見積もっています。

 

分析結果によると、最初に書いたように摂取していたタンパク質のうち約25%が海産物由来でした。現代の地中海沿岸の国々では、その割合が10%以下ですから、非常に高い割合なのが分かります10)

 

平均的な男女間差を見ると、女性は男性よりも陸上動物を多く食べていて、男性は女性より海産物を多く食べていました。

 

ただ男性のデータはばらつきが大きく、海産物を沢山食べている男性もいれば、女性と同等の人もいます。

 

ヘルクラネウムが港町であることを考えれば、海産物の消費量が多いことはある程度納得できます。では、男女差をどう考えればよいでしょうか。

 

当時、新鮮な魚は高級で、地位の高い人が主に食べていました。女性に比べて男性の方が地位の高い人が多かったことは想像できますね。

 

そして遺骨には様々な地位の男性が含まれていて、地位によって食生活が大きく異なっていただろうと推察できます。

 

地位の高い男性たちは宴会などで魚を食べながら、「ブルータス、お前も魚か」などと言いながら盛り上がっていたのかもしれません。




さて、皆さんは同位体分析の結果をどのように見てきたでしょうか。

 

今後、考古学者たちは同位体分析という強力なツールを使って、歴史上の人物を根掘り、葉堀り、いや墓掘って調べていくでしょう。

 

教科書を書き換えるような発見が続々と出てくるかもしれません。期待しましょう。



【参考文献】

  1. Angela L. et al.,  Multi-isotope analysis demonstrates significant lifestyle changes in King Richard III, J. Archaeol. Sci. 50, 559 (2014)
  2. 和田 英太郎 他、土壌中の窒素・炭素同位体組成。地球化学 14、7 −15(1980)
  3. 陀安 一郎 他、同位体環境学がえがく世界:2021 年版 
  4. 蔦谷 匠、安定同位体分析を用いた霊長類生態学。霊長類研究、 34 巻 1 号 p. 17-30 (2018)
  5. Wikipedia「リチャード3世」https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%893%E4%B8%96_(%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89%E7%8E%8B)
  6. Appleby J., et al., The scoliosis of Richard III, last Plantagenet King of England: diagnosis and clinical significance. Lancet 383(9932), 1944 (2014)
  7. 奈良文化財研究所研究報告 第17冊 (2016) 藤原宮跡出土馬の研究:[8]
  8. Soncin S, et al., High-resolution dietary reconstruction of victims of the 79 CE Vesuvius eruption at Herculaneum by compound-specific isotope analysis. Sci Adv. 7(35), eabg5791 (2021)
  9. Whiteman J.P. et al., A guide to using compound-specific stable isotope analysis to study the fates of molecules in organisms and ecosystems. Diversity 11(1), 8 (2019)
  10. Balanza R. et al., Trends in food availability determined by the Food and Agriculture Organization's food balance sheets in Mediterranean Europe in comparison with other European areas. Public Health Nutr. 10(2), 168 (2007)



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おぼろげながら浮かび上がってきた甘い物を食べた時に身体の中で起こる現象。

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1)

「意外と知られていないんですけど、、、、



甘いものを食べると太るんですよ。」



進次郎さんがこんな事を言ったら、当たり前でしょ!!と皆さん思いますよね。

 

ダイエットのために大好きな甘いものを我慢している人も多いと思います。

 

清涼飲料水やアイスなんかは一口も食べないぞ!と鉄の意志で欲望を抑えていることでしょう。



さて、ここで皆さんに確認したいことがあります。



そんな辛いダイエットをしているぐらいですから、甘いものを食べると“なぜ”太るのかを知らない人なんて、、、










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2)



恥ずかしながら告白します。僕はなぜ太るのか分かっていませんでした。

 

そして実は、食べ物が身体の中でどう利用されているかを研究する栄養学においてもきちんとは分かっていなかったのです。



一口に甘い食べ物と言っても、甘く感じる成分は色々あります。

 

有名なのはグルコースですね。一方でフルクトースはあまり知られていないかもしれません。

 

食品の原材料欄に”果糖ブドウ糖液糖”や”異性化糖”という文字を見たことがあるでしょうか。清涼飲料水、菓子パン、アイスなどに入っています。

 

主にトウモロコシから作られたもので、フルクトースという分子が主な成分です。食べ物を甘くしたいときに頻繁に使われています。

 

このフルクトースと肥満の関係が社会問題になっているのです。

 

WHOの調べによれば、1975年から肥満の人の数は世界中で3倍になっており、2016年の時点で6億人を上回っています3)。Covid-19と並んでもう一つのパンデミックとも言われています4)

 

一方でフルクトースはここ200年でその消費量が100倍に増えており、肥満の増加はフルクトースのせいではないか?と疑いをかけられているわけです5)

 

そんなわけでフルクトースと肥満の関係を調べた研究は無数にあります6,7)。それに対抗して飲料メーカはフルクトースは体に悪いものじゃないぞ!と主張したりしています8)

 

ただ、これまでの研究ではいまいち因果関係が分からないんですね。

 

フルクトースを大量に摂取している人はたしかに太っています。ただ、そういう人はたいてい食事の量も多いわけです。肥満の原因を見つけるのは簡単ではありません。

 

そして、フルクトースが身体の中でどう処理されているかの分子生物学的検討も足りていませんでした。

 

そんな中、近年になってフルクトースに関する大きな研究成果が出てきました。

 

例えば、フルクトースは肝臓で処理されているというのが一般常識でした。でも実はそれは間違っていて、小腸で処理されているという教科書を書き換える発見が報告されています9-11)

 

そして本年2021年にフルクトースと肥満の関係を示す面白い論文が出ました12,13)

 

マウスを使った実験です。ヒトを対象にすると食生活などを完全にはコントロールできませんからね。

 

論文では、フルクトースを与えるマウスのグループと与えないグループを準備し、それらに全く同じカロリーの食事をさせました。

 

結果は明瞭で、フルクトースを与えたマウスの方が体重の増加が大きかったのです。そして興味深いのはそのメカニズムです。

 

研究者たちはマウスの小腸をじっくり調べてみました。ここで小腸に着目できたのは上で紹介した論文があったからでしょう。

 

小腸には絨毛(じゅうもう)と呼ばれる無数の突起物があり(図1)、栄養を吸収する役割を持っています。

 

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図1 小腸に存在する絨毛



フルクトースを与えたマウスではこの絨毛がなんと25〜40%も伸びていたのです。

 

絨毛が伸びることでその表面積が大きくなり、栄養をたくさん吸収するようになり、そして太ったというわけなのです。

 

フルクトースが脂肪に変換されるというメカニズムではなく、栄養吸収を促進するという新しいメカニズムが示されたのです。

 

あくまでマウスの実験ですから、ヒトでも同じ現象が起きているかはまだわかりません。

 

そうは言っても、甘いものを食べるときは、自分のお腹の絨毛がにょきにょきと伸びていることを想像すると面白いかもしれません。

 

念のため注意しておくと、薄くなった頭に清涼飲料水をかけるのはやめましょう。そちらの毛は伸びませんよ。



【参考文献】

  1. 小泉進次郎 週刊文春オンライン (11月25日アクセス:https://bunshun.jp/articles/-/45117)
  2. 東京卍リベンジャーズ 和久井健
  3. Obesity and overweight. World Health Organization (11月26日アクセス:https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/obesity-and-overweight)
  4. Obesity: another ongoing pandemic. Lancet Gastroenterol Hepatol. 6(6):411 (2021)
  5. Bray G.A. et al., Consumption of high-fructose corn syrup in beverages may play a role in the epidemic of obesity. Am J Clin Nutr 79(4):537-543 (2004)
  6. van Buul V.J. et al., Misconceptions about fructose-containing sugars and their role in the obesity epidemic. Nutr Res Rev 27(1) 119-130 (2014)
  7. Stanhope K.L. et al., Sugar consumption, metabolic disease and obesity: The state of the controversy. Crit Rev Clin Lab Sci 53(1), 52-67 (2016)
  8. 異性化糖のすべて。CocaCola(11月25日アクセス:https://www.cocacola.co.jp/article/caloric-sweetener_04)
  9. Jang C. et al., The small intestine converts dietary fructose into glucose and organic acids. Cell Metab 27(2), 351-361.e3 (2018)
  10. Hellerstein, M. Surprising findings in a ‘well-understood’ nutrient-assimilation pathway. Nat Metab 2, 561–563 (2020)
  11. Jang, C. et al. The small intestine shields the liver from fructose-induced steatosis. Nat Metab 2, 586–593 (2020)
  12. Taylor, S. et al. Dietary fructose improves intestinal cell survival and nutrient absorption. Nature 597, 263–267 (2021)
  13. Nunes P.M. and Anastasiou D. Fructose in the diet expands the surface of the gut and promotes nutrient absorption. Nature 597(7875), 180-182 (2021)

 

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mRNAワクチンはがん治療に使えるってどういうこと?ちゃんと説明してみよう。

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新型コロナ向けmRNAワクチンを解説する記事では、たいていこんな事が書いてあります。

 

「将来この技術はがんワクチンに応用されるでしょう」

 

これを読んで何となく雰囲気は分かっても、がんワクチンが働く仕組みを理解している人は少ないと思います。

 

明日から知ったかぶりできるように勉強しておきましょう。



がん細胞というのは喫煙だったり紫外線だったり原因は様々ですが、細胞の中のゲノムDNAが変異することで発生します。ある日、普通でいい子だった細胞がグレてしまうのです。

 

身体の中で自警団として働いている免疫細胞はがん化した細胞がいないか見張っています。ところがいくつかの問題があって、簡単には見つけられませんa)。なにせ元々は普通の細胞。真面目な高校生をやっているけど、実はトイレで隠れてタバコを吸っているといった感じで、グレてるのか簡単にはわからないのです。

 

そこで免疫細胞にがん細胞の特徴を教えてあげるのががんワクチンなのです1,2)

 

ゲノムDNAは細胞の設計図の役割をしており、それが変異するわけですから、普通とは異なる分子ががん細胞の中で作られます。

 

この分子はがん細胞だけに存在するので、普通の細胞との区別に使えます。それを免疫細胞に教えてあげればいいわけですね。理論通り働けば、免疫細胞はがん細胞を見つけてボコボコにしてくれるはずです。

 

免疫細胞に覚えさせる分子をネオアンチゲンと言います。ネオアンチゲンを利用したワクチンのコンセプトは昔からあったのですが、2015年頃からやっと論文で良い成果が発表され始めました3-5)。がんワクチンの発展の裏には3つの技術的ブレイクスルーがあるのです。

 

1つ目は次世代DNAシーケンサです6,7)

 

ネオアンチゲンを見つけるためにはがん細胞のゲノムDNAのどこが変異しているのかを調べる必要があります。

 

でもそれは簡単ではありませんでした。ゲノムDNAは何個の分子が繋がったものかご存知でしょうか。

 

約30億個です。

 

こんな沢山の分子の情報を読み取れるのが次世代DNAシーケンサです。

 

2000年頃までは国家ぐるみで人間のゲノムDNAを解析していました。その頃使っていたのが第一世代のDNAシーケンサです。

 

それを進化させたのが次世代シーケンサで、今や1研究室でもゲノムDNAを全解読できます。



2つ目の技術的ブレイクスルーは計算科学の発達です。特にディープラーニングがこの分野でも活躍しています8)

 

30億個のDNA情報が得られたとしても、どんなネオアンチゲンが細胞で作られるかを解析しないといけません。

 

特に重要なポイントがあって、そのネオアンチゲンを免疫細胞が認識できるかどうかです。

 

例えば背中に刺青のある人は全員悪人という情報があっても、相手が服を着ていたら分かりません。顔だったり服だったり表に出ている特徴が必要です。

 

つまり、がん細胞の表面に出ているネオアンチゲンを推測しなければいけません。この推測精度が計算科学の発達と共に上昇してきましたb)



こうやってネオアンチゲンを決めるとこまでは来ました。次の課題はどうやってネオアンチゲンの情報を免疫細胞に教えるかです。

 

がん細胞でゲノムDNAのどこが変異するかは主にランダムです。つまり患者さんによってネオアンチゲンが異なるのです。

 

あなただけのオンリーワン。世界に一つだけのネオアンチゲンですc)創薬側から見るとこれは全然嬉しい話ではなく、患者さん一人一人に適合したワクチンを作る必要があるわけです。

 

コストや手間を考えると、そんなの無理ゲーじゃんとなっていたんですね。

 

この難問を打破するのが3つ目の技術的ブレイクスルーであるmRNAワクチンです。

 

mRNAワクチンの特徴は、低コストでかつ迅速に設計・生産できること。そして身体の中で任意の分子を作れることです。と、昔から言われていたのですが、実証されていませんでした。なにせ実用化されたものは無かったのですから。

 

本当に理論通り働くのか懐疑的な人もたくさんいたわけです。それが今やコロナ禍での大活躍により、もう実力を疑う人は少数派でしょう。

 

AI分野がそうであったように、良い成果が出た研究領域には他分野の優秀な人材がどんどん参入してきます。そして加速度的に研究が進んでいくのです。

 

mRNAワクチンは過去にないスピードで発展していくはずです。



ここで紹介した3つの技術的ブレイクスルーによって人類はがんワクチンという強力な武器を手にしようとしています。

 

がんと診断された場合、がん細胞を身体から採取してきて次世代DNAシーケンサで解析。ディープラーニングを活用してネオアンチゲンを決定。そしてmRNAワクチンを投与することで免疫細胞にネオアンチゲンの情報を伝える。すると、免疫細胞ががん細胞をやっつけてくれる。こういった治療法が誕生するのです。



さて、長々とがんワクチンについて説明してきました。最後にとっても大事なことをお伝えします。これまで書いてきた中でもっとも重要な話です。



あなたやあなたの大切な人ががんになった時、けっしてがんワクチンを頼ってはいけません。



有望なテクノロジーであることは間違いありません。でもまだ臨床試験段階です9)。実用化されたものはありません。

 

Googleで“がんワクチン”と検索して出てくるクリニックを頼るのはやめましょう。

 

自分の体でがんワクチンを試して科学の発展のために身を捧げる!という意気込みの方もいるかもしれません。

 

残念ながら、きちんと設計されていない臨床試験は科学を一歩も前に進めないのです。



がんワクチンはまだ未来のテクノロジーです。

 

でもそれは漫画に出てくるような荒唐無稽な代物ではありません。着実にエビデンスが溜まりつつある現実的な目標です。

 

将来がん医療に革命をもたらすことは間違いないでしょう。



【補足】

a) 免疫細胞ががん細胞をうまく処理できない理由は、制御性T細胞の影響であったり、がん細胞周囲の微小環境の影響であったり様々です。がん細胞には免疫細胞の攻撃を止めさせる機能があり、そこにアプローチしたのがノーベル賞になった免疫チェックポイント阻害剤です。

b) 次世代シーケンサディープラーニングに限らず、複数の手法を使ってネオアンチゲンの同定が試みられています。しかし、ネオアンチゲンを同定できたとしても治療用に有効だったのはごくわずかであったという報告もあります10,11)。一方、薬によってネオアンチゲン量を増やして免疫細胞に認識しやすくさせようという試みもあります12)。ホットな研究領域ですね。

c) がん細胞には複数の変異が入るので、ネオアンチゲンが1つとは限りません。オンリーワンというよりはオンリーワンセットと言った方がいいかもしれません。また、がん細胞で頻繁に起こる特定の変異があるので患者間で共通のネオアンチゲンも存在します。その共通のネオアンチゲンを狙うことで1種類のワクチンで多くの患者を救おうという試みもあります。

 

【参考文献】

  1. Miao, L. et al. mRNA vaccine for cancer immunotherapy. Mol Cancer 20, 41 (2021).
  2. Duarte, J.H. Individualized neoantigen vaccines. Nature Milestones:Vaccines. 525 (2020)
  3. Carreno, B.M. et al. A dendritic cell vaccine increases the breadth and diversity of melanoma neoantigen-specific T cells. Science 348, 803–808 (2015)
  4. Ott, P. et al. An immunogenic personal neoantigen vaccine for patients with melanoma. Nature 547, 217–221 (2017).
  5. Sahin, U. et al. Personalized RNA mutanome vaccines mobilize poly-specific therapeutic immunity against cancer. Nature 547, 222–226 (2017)
  6. Mardis, E.R. Genomic prediction of neoantigens: immunogenomics before NGS. Nat Rev Genet 22, 550–551 (2021)
  7. イルミナ:次世代シーケンサ(NGS) の紹介(9月29日アクセス:https://jp.illumina.com/science/technology/next-generation-sequencing.html)
  8. Chen, B. et al. Predicting HLA class II antigen presentation through integrated deep learning. Nat Biotechnol 37, 1332–1343 (2019)
  9. Blass, E. et al., Advances in the development of personalized neoantigen-based therapeutic cancer vaccines. Nat Rev Clin Oncol 18, 215–229 (2021)
  10. Löffler, M.W. et al. Multi-omics discovery of exome-derived neoantigens in hepatocellular carcinoma. Genome Med 11, 28 (2019)
  11. Samuels Y. et al. Combined analysis of antigen presentation and T cell recognition reveals restricted immune responses in melanoma. Cancer Discov CD-17-1418 (2018) 
  12. Truong A.S. el al., Entinostat induces antitumor immune responses through immune editing of tumor neoantigens. J Clin Invest 131(16):e138560 (2021)

 

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腸内細菌が世界を救う。ジェフリー・ゴードン教授の挑戦

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世界中で約1.5億人が苦しんでいる。

 

日本の総人口を上回る人数だ。みなさんは何を想像するだろうか。

 

ユニセフが発表した統計データによると1)、5歳未満の子供1.5億人が栄養失調であり、そしてそれが原因で発育不良状態なのだ。

 

乳幼児期の栄養はその後の発達に非常に重要だ。特に2歳までの栄養が不十分だと、免疫系や神経系の発達に影響が出てくる。

 

もちろん世界的に問題視されており、貧困国のそういった子供たち向けに栄養治療食品が配られている。

 

ところが栄養治療食品を食べても症状が改善しない子供たちがいる2,3)。食品が身体に合わないのか、食事以外の要因が影響しているのか。まだまだ不明な点が多いのが現状だ。

 

この問題に立ち上がったのがワシントン大学のジェフリー・ゴードン教授である。彼は他の人とは違う視点から問題に取り組んでいる。

 

子供たちの腸内細菌だ。

 

ゴードン教授の研究グループは子供の腸内細菌をコントロールすることで発育不良を改善しようとしている。

 

ヨーグルトを食べさせるってこと?と思っただろうか。

 

そんな簡単な話じゃない。ゴードン教授らは膨大な実験をこなし、腸内細菌をコントロールする技術を磨いてきた。そしてその努力が今まさに実ろうとしているのだ。



2014年にNatureに掲載されたゴードン教授の論文では、バングラディシュの子供たちのウンチを分析して腸内細菌の状態を調べている4)

 

一言で腸内細菌と言っても、1種類の細菌ではなく沢山の種類の細菌で構成されている。その構成パターンが子供の状態によって変わってくるわけだ。

 

まずゴードン教授は健康な子供のウンチを使い、成長に伴ってどのように腸内細菌パターンが変わっていくかを明らかにした。

 

続いて、栄養不足による発育不良の子供たち。彼らの腸内細菌はどうなっていたか。

 

発育不良の子供たちの腸内細菌は同年代の健康な子供に比べて未発達だったのだ。本来成長するに従って増えるはずの腸内細菌が増えていなかった。

 

この結果を見て、「じゃあ健康な子の腸内細菌を移植すればいいんじゃね?」と思うの早計だ。

 

腸内細菌が発育不良の原因なのか結果なのかまだ分からない。

 

これを明らかにしたのが2016年にScienceに載ったゴードン教授の論文だ5)

 

ゴードン教授らは無菌マウスを準備して、そのマウスに健康な子供と発育不良の子の腸内細菌を移植した。腸内細菌がマウスの成長にどう影響するかを見たかったのだ。

 

さて、どうなったか。

 

発育不良の子供の腸内細菌を移植したマウスは成長が著しく悪くなったのだ。さらに血液成分を分析すると、成長に関わる分子の量が低下していた。やはり腸内細菌が発育不良の原因の可能性が高い。

 

結果としては僕らも予想した通りだったが、きちんとデータで示すところがさすがのゴードン教授である。

 

NatureやScienceに論文を投稿している教授と、TwitterInstagramに駄文を投稿している僕らではモノが違う。



さて目標は明らかになった。子供たちの腸内細菌パターンを改善することだ。

 

ゴードン教授は腸内細菌パターンを改善する健康補助食品を作ることにした。

 

その結果は2019年のScienceに掲載されている6,7)。しかも論文2本同時掲載だ。

 

まず無菌のマウスと豚を準備し、発育不良の子供の腸内細菌を移植した。そして様々な食材を食べさせ、その効果を分析したのだ。

 

さすがゴードン教授と唸らせられるが食材の選択である。あくまで貧困国で手に入る低価格の食材だけを使っている。

 

松坂牛を食べれば健康になりますよ、なんて結果を出しても意味がない。論文を出すための研究ではなく、あくまで貧困国の子供たちを助けるための研究なのだ。

 

実験の結果から、マウスと豚の腸内細菌を改善し、血液中の成長因子を増加させた食材を組み合わせて3種類のプロト食品を作りだした。

 

さらに、その食品をバングラデシュの発育不良の子供達に食べてもらった。すると、試した食品のうち1種類の食品が腸内細菌パターンを健康な子供のそれへと近づけたのだ。さらに血液中の成長因子を増加させることも確認できた。



ついに腸内細菌をコントロールする健康補助食品の完成だ。



これで子供たちを救える。



。。。とはまだならない。

 

ゴードン教授の歩みはこんな所では止まらない。

 

開発した健康補助食品が本当に有効であるかを調べるため、バングラデシュ臨床試験を行ったのだ。

 

本年2021年にその結果がThe New England Journal of Medicineに掲載された8)

 

発育不良の子供を約60人ずつの2グループに分け、1つのグループにはゴードン教授が開発した健康補助食品を、もう1つのグループには現在使われている補助食品を一定期間食べてもらった。

 

さてどうなったか。

 

結果は明白だ。

 

ゴードン教授の健康補助食品を食べた子供たちは、腸内細菌パターンが改善し、血液中の成長因子が増加し、そして身体が大きく成長していた。

 

世界中1.5億人の子供を救う健康補助食品がついに完成したのだ。

 

腸内細菌という当時は誰も目をつけなかった観点に着目し、着実にエビデンスを積み上げ、そして臨床試験での成功にまで至った。

 

ゴードン教授の努力の結晶とも言える食品だろう。



Most people think of microbes in war-like terms as enemies. We study the microbiome of humans and see microbes as friends, as companions9).

ほとんどの人は微生物を戦争のように敵として考えています。私たちはヒトの微生物たちを研究し、微生物を仲間として、そして友人として見ているのです。

 

Jeffrey Gordon

ジェフリー・ゴードン



【参考文献】

  1. UNICEF-WHO-The World Bank: Joint child malnutrition estimates - levels and trends - 2021 edition
  2. Dewey K.G. Reducing stunting by improving maternal, infant and young child nutrition in regions such as South Asia: evidence, challenges and opportunities, Matern. Child. Nutr. 12 Suppl 1(Suppl 1), 27-38 (2016)
  3. Ashraf H. et al. A follow-up experience of 6 months after treatment of children with severe acute malnutrition in Dhaka, Bangladesh. J. Trop. Pediatr. 58(4), 253-257 (2012)
  4. Subramanian, S., et al. Persistent gut microbiota immaturity in malnourished Bangladeshi children. Nature 510, 417–421 (2014).
  5. lanton L.V. et al. Gut bacteria that prevent growth impairments transmitted by microbiota from malnourished children. Science 351(6275) aad3311 (2016).
  6. Gehrig J.L. et al. Effects of microbiota-directed foods in gnotobiotic animals and undernourished children. Science, 365, eaau4732-eaau4732 (2019)
  7. Raman A.S. et al. A sparse covarying unit that describes healthy and impaired human gut microbiota development. Science 365, eaau4735-eaau4735 (2019)
  8. Chen R.Y. et al. A microbiota-directed food intervention for undernourished children. N. Engl. J. Med. 384(16), 1517-1528 (2021)
  9. Interview with Jeffrey Gordon, winner of the Frontiers of Knowledge Award in Biology and Biomedicine

 

 

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最新技術によって鬼にならなくても永遠の若さが手に入る時代がやって来る。

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「老いることも死ぬことも 人間という儚い生き物の美しさだ」

 

漫画 鬼滅の刃の作中で、鬼にならないか?と問われた煉獄杏寿郎が放った言葉だ。

 

鬼になれば永遠に若く、そして強くいられる。

 

そんなことよりも人間としての矜持を彼は守ったのだ。

 

この一言を映画館で聞いた僕は、全くその通りだなと涙ながらに同意していた。



ところがである。



映画が終わり、トイレに行き、そして手を洗いながら鏡で髪の毛が寂しくなった自分の姿を見た瞬間、

 

「永遠の若さと毛根の強さが欲しいわぁ。」

 

思わずそう呟いてしまったのだ。

 

鬼にはなりたくないけど、若くはなりたい。



世界中の研究を見渡してみると、鬼になる研究は見当たらないが、若くなるための研究は数多く行われている。

 

実は、ある技術の発展によって老化を克服できる可能性が少しずつ高まってきているのだ。

 

その技術ってiPS細胞のことかな?

 

そう思った読者もいるかもしれない。

 

京都大学の山中教授は、体から取り出してきた細胞に山中因子と呼ばれる4つの遺伝子を導入した1)。すると、その細胞は多能性を得る、すなわち、どんな種類の細胞にも分化できるiPS細胞に変化したのだ。

 

細胞の分化は山を転がるボールで喩えられ、ウォディントンの地形で表現される2)(図1)。

 

山の頂上にある細胞はあらゆる種類の細胞に分化できる能力を持っている。そして、頂上から転がり落ちることが分化であり、ある安定した領域に到達する。

 

どの領域に転がっていくかで心筋細胞になったり、皮膚細胞になったりするわけだ。

 

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図1 ウォディントンの地形



山中因子の役割は、細胞を再び山の頂上に持っていくようにリプログラミングすることなのだ。

 

頂上に戻れば、どこの安定領域にもまた転がることができる。

 

iPS細胞を使って新しい臓器を作り出せば、身体のあらゆる部分を新品に交換できる可能性がある。

 

iPS細胞によって老化を克服できそうな気がするだろう。さて、それは実現可能だろうか。

 

例えば、老化に伴って糖尿病になり、膵臓を交換したい場合を想像してみよう(図2)。

 

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図2 膵臓の再生



まず自分の皮膚から細胞を取ってくる(ステップ1)。

 

次に、細胞に山中因子を加えてiPS細胞に変化させる(ステップ2)。

 

続いて、iPS細胞を膵臓の細胞へと分化させる(ステップ3)。

 

さらに細胞を組み合わせて膵臓という立体的な臓器を作る(ステップ4)。

 

作製した臓器を身体に移植する(ステップ5)。



考えてみると、めちゃくちゃステップが多いのだ。そして、どのステップも研究段階で方法が確立されていない。

 

どうにかしてプロセスをもっと単純化できないだろうか。

 

こういう課題意識で注目されている技術が"ダイレクトリプログラミング"だ3)

 

この技術では、身体から取り出した細胞をiPS細胞には変化させず、直接目的の細胞へと変化させる。

 

ウォディントンの地形で考えれば、頂上を通らずにある安定領域から別の安定領域へとボールを運ぶことになる(図3)。

 

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図3 ダイレクトリプログラミング

 

iPS細胞に変化させるステップが省かれ、プロセスが単純化するのだ。

 

それでもまだまだプロセスは複雑だ。

 

何しろ立体的な臓器を造るという関門が残っている。身体の中とは違う環境で、期待通りの臓器を形成できるかは疑問が残るところだ。

 

ここでピンときた読者もいるかもしれない。



身体の中でダイレクトリプログラミングしてやればいいじゃないか。



まさにその発想が、近年続々と成果が出ている"生体内リプログラミング"である4,5)

 

身体の中の細胞を別の機能を持った細胞に直接変換してやるわけだ。

 

これまでに、膵臓6)、皮膚7)、心筋8)、脳神経9)の細胞を身体の中で生み出すことに成功している。

 

もちろんヒトでの実績は無い。対象は実験動物だ。それでも、成果は着実に溜まってきている。

 

そしてこの生体内リプログラミングは老化をも克服しつつある。

 

老化の影響をウォディントンの地形で考えてみよう(図4)。

 

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図4 老化

 

年をとってくると、細胞は自身が持つ遺伝情報をうまく使えなくなってくる。

 

それは細胞が安定領域に留まっていられず、そこから転げ落ちてしまうことを意味する。

 

そこで、生体内リプログラミングによって元の位置に戻そうという発想が出てくるわけだ。

 

2016年にCellに掲載された論文では、マウスに山中因子4つを導入することで生体内リプログラミングを試みている10)

 

山中因子を長期的に体内で機能させると、がん化することが知られている。ウォディントンの地形で言えば、山を登りすぎてはいけないのだ。そこで論文では、山中因子を短期的に機能させるように工夫している。

 

その結果、なんとマウスの寿命を伸ばすことに成功している。

 

また、老化したマウスに生体内リプログラミングを施すと、細胞が若返り、筋肉や膵臓が傷付ついた時の回復スピードが向上することを確認しているのだ。

 

2020年にNatureに掲載された論文も老化克服への期待を持たせてくれる11)

 

この論文は、日本でベストセラーとなったLIFE SPANの著者であるハーバード大学のシンクレア教授グループの成果だ。

 

マウスの眼に対して山中因子のうち3つを導入することで生体内リプログラミングを試みている。

 

その結果として、老化に伴って発症する緑内障を改善できるというデータを得ている。また、眼の神経が傷ついた場合の回復スピードも向上していた。

 

さらに、老化したマウスの視力自体を回復できることも実証しているのだ。



繰り返しになるが、紹介してきた研究はあくまで実験動物が対象だ。

 

ヒトで成果が出るにはまだまだ時間がかかるだろう。

 

それでも生体内リプログラミングの分野では次々と大きな成果が出ている。何10年先になるかは分からないが、薬を注射するだけで老化を克服できる日がきっとやって来る。

 

その日がやって来たとき、こんな質問をされたら君たちは何と答えるだろうか。




「素晴らしい提案をしよう。」



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12)



【参考文献】

  1. Takahashi K., Yamanaka S., Induction of pluripotent stem cells from mouse embryonic and adult fibroblast cultures by defined factors. Cell. 126(4), 663-676 (2006)
  2. Ladewig, J. et al., Leveling Waddington: the emergence of direct programming and the loss of cell fate hierarchies. Nat Rev Mol Cell Biol 14, 225–236 (2013)
  3. Mollinari, C., Merlo, D. Direct Reprogramming of Somatic Cells to Neurons: Pros and Cons of Chemical Approach. Neurochem Res 46, 1330–1336 (2021)
  4. Srivastava D., DeWitt N., In Vivo Cellular Reprogramming: The Next Generation, Cell 166(6):1386-1396 (2016)
  5. Ofenbauer, A., Tursun, B., Strategies for in vivo reprogramming. Curr. Opin. Cell Biol. 61, 9–15 (2019)
  6. Zhou, Q. et al. In vivo reprogramming of adult pancreatic exocrine cells to β-cells. Nature 455, 627–632 (2008)
  7. Kurita, M. et al. In vivo reprogramming of wound-resident cells generates skin epithelial tissue. Nature 561, 243–247 (2018)
  8. Qian, L. et al. In vivo reprogramming of murine cardiac fibroblasts into induced cardiomyocytes. Nature 485, 593–598 (2012)
  9. Li H., Chen G., In Vivo Reprogramming for CNS Repair: Regenerating Neurons from Endogenous Glial Cells. Neuron 91(4), 728-738 (2016)
  10. Ocampo A. et al., In Vivo Amelioration of Age-Associated Hallmarks by Partial Reprogramming. Cell 167(7), 1719-1733 (2016)
  11. Lu, Y. et al. Reprogramming to recover youthful epigenetic information and restore vision. Nature 588, 124–129 (2020)
  12. 吾峠呼世晴 鬼滅の刃


 

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ブレインテック最前線。ニューロフィードバックは本物か。

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「脳×テクノロジー」のブレインテックの最前線で、「ニューロフィードバック」が注目を集めている。

 

恐怖を感じる、勉強する、運動する。それぞれの状況で、脳は特定の領域を活性化させる。

普段、そうした脳の状態を僕らは知ることができない。

しかし、ニューロフィードバック技術を使えば、脳の活動状態をリアルタイムで可視化できる。さらには、脳神経の配線を希望する状態に書き換えることもできるのだ。

 

この技術を使えば、鬱病を治療できたり、人の好みを変えたり、運動機能を向上させたりもできる。

 

この文章だけ読むと、「なんか胡散臭いなぁ。。。」と思うかもしれない。

 

ところが近年になってニューロフィードバックを利用した研究はNatureやScienceなどの権威ある雑誌に続々と掲載されている。さらには、二重盲検という信頼性の高い手法でその効果が実証されているのだ。

 

もしやニューロフィードバックって本当に効果があるのでは?と思わずにはいられなくなってきた。

 

ニューロフィードバックの実施方法

基本となるのは、被験者の脳を脳波計MRIで測定することだ。

 

フィードバックの方法は研究によって様々で、例えば被験者の前にディスプレイを置き、丸い円を見せる。

 

脳の測定結果を基に、脳が期待する状態に近づくと、円が大きくなるように設定しておく。すなわち、脳の状態を円の大きさとして被験者にフィードバックするわけだ(図1)。

 

被験者は「円が大きなるようにイメージして下さい」と指示される。

 

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図1 ニューロフィードバックの様子。


まるで念力のようだ。最初はどうやればいいか分からないだろう。人によっては時間がかかるが、あぁでもない、こうでもないと唸っているうちに円を大きくするコツを掴むようになる。

 

こうやって脳の状態を被験者にフィードバックしながら、脳の特定の領域を活性化させたり、逆に抑制したりするのだ。



さてここから、ニューロフィードバックの有効性を示した4つの研究を紹介していこう。

 

精神疾患の改善

 2019年にNature姉妹紙に掲載された論文では、軍人のメンタル改善を試みている1,2)

 

軍人の3人に1人が心的外傷後ストレス障害を患うという報告がある。鉄の心を持っていそうな屈強な軍人も戦争に行くと、心へのダメージが大きいのだろう。

 

感情の中枢と呼ばれる脳の扁桃体が過剰に活発化すると、精神疾患を発症することが知られている(図2)。そこで論文では、扁桃体の状態を被験者にフィードバックし、その活動を抑制するようにトレーニングしたのだ。

 

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図2 脳を側面および正面から見た図。図中の赤い部分が扁桃体


実験では、扁桃体の状態をフィードバックしたグループ”扁桃体”と、脳の別の特性をフィードバックしたグループ”対照群”を準備している。そしてこの割り当ては2重盲検だ。

 

2重盲検では、実験する研究者とフィードバックを受ける被験者の両方とも誰がグループ”扁桃体”なのか分からない。

 

なぜそうするか。

 

被験者は自分がグループ”扁桃体”だと分かると、「あぁ、なんかビンビン来てるわぁ」と思ってしまい、それ自体が効果を発揮してしまう。いわゆるプラセボ効果だ。

 

研究者の方も、目の前にいる被験者がグループ”扁桃体”だと分かると、「この人に反応が出たら、Natureに論文を出せちゃうかも」という感情が顔に出てしまい、それが被験者に伝わる。

 

これらの影響を排除できる2重盲検は信頼性の高い実験手法なのだ。

 

この論文では、ニューロフィードバックによってグループ”扁桃体”だけが有意にメンタルを改善できたと報告している。



②恐怖の克服

 ヘビやゴキブリなど自分が怖いと思っているものを見た時、心拍数が上がったり、手に汗をかいたりする。

 

こういった恐怖反応を低減する方法が2018年の米国アカデミー紀要の論文で提案されている3,4)

 

この研究も2重盲検で行われている。

 

例えばヘビをとても怖がる人がいたとしよう。ヘビを見た時、その人の脳は恐怖を示す状態になる。

 

論文の実験では、被験者はMRIで脳を測定されながら、ディスプレイに映る円を大きくしようと努力する。

 

円の大きさは脳状態がヘビを見た時に近づくほど大きくなる。そして被験者は円を大きくできるほど沢山の金銭報酬を受け取れるというルールだ(図3)。

 

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図3 ヘビを見た時の脳状態になると、金銭報酬を受け取れる。


このトレーニングを実施すると、”ヘビを見た時の脳の状態”は被験者にとって好ましい状態になる。

 

結果として、実際にヘビを見た時の恐怖感を低減できるのだ。

 

ここでポイントは、被験者はニューロフィードバック中に”ヘビを見る必要が無い”という点だ。被験者は目の前の円を大きくしようとしただけである。

 

被験者は無意識のうちにヘビへの恐怖心を克服できるのだ。



③集中力を高める

 何かの作業している時に、一瞬だけ他のことを考えてしまって思わぬミスすることがある。

 

例えば、車の運転中に一時停止を見逃してしまったり、コーヒーに塩を入れてしまったり。

 

2015年にNature姉妹紙に掲載された論文では、集中力を高めてこういったミスを無くすトレーニングを提案している5,6)

 

被験者はMRIで測定されながら、集中力テストを受ける。このテストでは、屋外もしくは室内の背景と人の顔が重なった複数の画像を連続的に見せられる(図4)。

 

そして、室内が映ったときはボタンを押し、屋外が映った時はボタンを押さないように指示される。

 

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図4 集中力テストで表示される画像例。


見せられる画像が100枚とすると、90枚は室内で、残りが屋外だ。すなわち大半の場合はボタンを押す必要がある。

 

たまに出てくる屋外画像を見逃してボタンを押してしまってはいけない。

 

集中力の継続が試されるテストなのだ。

 

さて、このテストでニューロフィードバックをどう使うか。

 

テスト中、MRIによって被験者の集中状態を把握する。そして、集中力が欠けてきたら、背景に重ねている人の顔を強調する。逆に集中力が上がったら人の顔を透明にして、背景を見えやすくする(図5)。

 

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図5 集中力のフィードバック。


これは被験者にとって報酬と罰なのだ。

 

集中力が高まれば報酬として問題が簡単になり、集中力が低下すると罰として問題が難しくなる。

 

集中力を高めるインセンティブが被験者に働くというわけだ。

 

実験では比較として、集中力とは関係ない脳の状態をフィードバックしたグループも準備している。

 

フィードバックを取り入れた集中力テストを実施した後に、フィードバック無しで同様のテストを行った。その結果、集中の度合いをフィードバックしたグループだけが後半のテストの正答率を向上できたのだ。



④運動能力の向上

 ”メンタル”、”恐怖”、”集中力”という、いかにも脳が関わりそうな要素へのニューロフィードバックの効能を紹介してきた。

 

最後は運動能力だ。

 

考えてみれば運動だって脳がコントロールしている。

 

2020年に神経科学の専門誌に掲載された論文では、脳の補足運動野をターゲットにしている7)。補足運動野は体の動き出しに関わる領域だ。

 

被験者はMRIで測定されながら、ディスプレイ上にアナログ温度計を見せられる。温度の値は補足運動野の活動状態を反映させている(図6)。

 

被験者はディスプレイ上の温度が上がるように念じることで、補足運動野を活性化させるのだ。

 

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図6 補足運動野の活性状態を温度で表示。


続いて運動能力の評価。

 

指をキーボードに置き、画面に緑ランプが点いたら、できるだけ速くキーを押す。赤いランプの場合は押してはいけない(図7)。

 

実験の結果、補足運動野を活性化させると、緑ランプが点灯してからキーを押すまでの時間が有意に短くなることが分かったのだ。

 

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図7 運動能力の評価。


今後、何に使われていくか

 ニューロフィードバックを使った様々な論文を紹介してきた。

 

ここまで読んでくれた方の中には、ニューロフィードバック関連の商品をポチりたくなっている人もいるかもしれない。

 

それは待ってほしい。あくまでニューロフィードバックはまだ研究段階だ。

 

例えば精神疾患に対しては現在のところ投薬が標準治療だし、今後もそうだろう。

 

安易に怪しい商品に飛びついてはいけない。

 

では将来ニューロフィードバックが活躍する分野はどこだろうか。

 

僕としては英語学習での応用を期待したい。

 

英語を勉強していて、「ネイティブスピーカーの脳に書き換えてほしい」と思ったことはないだろうか。

 

僕は頻繁に思っている。

 

単語を覚えられなかったり、聴き取れなかったり、うまく発音できなかったり。そんな時は脳の配線を書き換えられれば良いのにと思っていた。

 

リスニングに関しては、ニューロフィードバックを使った研究がある。LとRの音を聴き分ける能力を向上させるという論文が出ているのだ8)

 

同じように発音練習にもニューロフィードバックを取り入れるのはどうだろう。

 

過去の研究を調べると、口の周りの筋電や超音波センサーで取得した舌の動きを発音練習にフィードバックする試みはあるようだ9,10)

 

これらよりも脳の状態をニューロフィードバックした方が効果が高くはならないだろうか。

 

東大の暦本教授は、研究とは“新しいクレームを提示して、それを立証する”ことと定義している11, 12)

 

クレームというのは研究を一文で説明するものであり、正誤が客観的に判定できる言明だ。

 

では、こんなクレームを立ててみる。

 

「ニューロフィードバックを用いて、英語発音中の脳の状態がネイティブスピーカーに近づくようにトレーニングすることで発音を改善できる。」

 

これはまだ僕の妄想であって、上手くいくかは分からない。ただ面白い研究にはなりそうだ。



ニューロフィードバックは本物か。

 

それを判断するためには、自分で研究してみるのが一番良さそうだ。



【参考文献】

  1. Keynan, J.N. et al. Electrical fingerprint of the amygdala guides neurofeedback training for stress resilience. Nat Hum Behav 3, 63–73 (2019).
  2. Young, K.D. Neurofeedback for soldiers. Nat Hum Behav 3, 16–17 (2019).
  3. Kazuhisa S. et al., Perceptual learning incepted by decoded fMRI neurofeedback without stimulus presentation. Science 334, 1413-1415 (2011)
  4. Taschereau-Dumouchel V. et al., Towards an unconscious neural reinforcement intervention for common fears. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 115(13), 3470-3475 (2018)
  5. deBettencourt, M., Cohen, J., Lee, R. et al. Closed-loop training of attention with real-time brain imaging. Nat Neurosci 18, 470–475 (2015).
  6. Awh, E., Vogel, E. Attention: feedback focuses a wandering mind. Nat Neurosci 18, 327–328 (2015).
  7. Al-Wasity S. et al., Upregulation of Supplementary Motor Area Activation with fMRI Neurofeedback during Motor Imagery. eNeuro 22;8(1), ENEURO.0377-18 (2020)
  8. Chang M. et al., Unconscious Improvement in Foreign Language Learning Using Mismatch Negativity Neurofeedback: a preliminary study. PLoS ONE 12(6): e0178694 (2017)
  9. YANG Xu et al., The EMG measurement of facial muscles in pronouncing English words. Proceedings of the 2016 JSME conference on Robotics and Mechatronics, 15-2, 1P2-J04.
  10. ウィルソン 他, 超音波を用いた調音の指導と研究. 日本音響学会, 70(10), 560-564 (2014)
  11. 暦本 純一, 妄想する頭 思考する手 想像を超えるアイデアのつくり方. 祥伝社 (2021)
  12. 暦本 純一, 研究法について (https://www.slideshare.net/rekimoto/claim-62836813) (2021年3月15日アクセス)

 

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