みなさんは”ふるさと納税”をしているだろうか?
ふるさと納税とは、住民税の一部の納める先を自分で選択できる制度だ。自分が住んでいる街ではなく、好きな街に税金を納める事ができる。
お得なのは、納税額の3割程度の返礼品をもらえる所だ。例えば10万円をふるさと納税すると、3万円相当の牛肉を貰えたりする。
ふるさと納税したことない人には理解が難しいだろう。僕も初めは何を言っているのか全然理解できなかった。
ただ、分からないままでもやってみると驚くのだ。
パソコンでカチカチとクリックするだけで、牛肉やら魚介やら美味しい食材がどんどん届く。
冷凍庫が返礼品で溢れかえる。
なんだこれは?打ち出の小槌か?こんなお得な制度を利用しないヤツは情弱野郎だ!
そう興奮しながら毎年のように、僕はふるさと納税を続けてきた。返礼品の食べ過ぎで、ふるさと納税太りを心配するぐらいだ。
ところがである。
ある日、僕は保育園に3歳の娘を連れて行きながら、ふと疑問に思った。
住んでいる街に納めるはずだった税金を、他の街に納税したということは、僕の住む街の税収が減ったのでは?
。
。
。
。
とてつもなく当たり前の事を書いている。
だが、こんな事も考えずに僕はふるさと納税をしてきた。
我が家には0歳の息子もいて、来年保育園に入れたいと思っている。なので保育園の数を増やして欲しいなぁ、とよく愚痴を言っている。
子供と図書館に行って、話題の新刊本が入荷されていないと、もっと手早く入荷しろよなぁ、とよく愚痴を言っている。
なんと僕は税金を払わずに、税金の使い方に文句を言っていたのだ。
その事に気付いた日から、ふるさと納税のサイトを見ると、試されている気がしてくる。
「君は住んでいる街に感謝していないのかい?」
実際のところ、ふるさと納税している事が理由で、保育園に落選することは無いし、図書館の本の予約順を抜かされる事もない。
ふるさと納税をしてもしなくても、同じように住民サービスを受けられる。実害はない。
だが良心は揺さぶられる。
僕はふるさと納税してもよいのだろうか?
保育園には多額の税金が投入されている。少なくとも保育園に子供たちを入れている間はふるさと納税を止めよう。
そう思った。
ところがである。
一度広がった胃袋は簡単には元に戻らないのだ。
僕の胃袋は空から降ってくる霜降りの牛肉や水々しい魚介達を求めているのだ。
あぁ苦しい。
良心と胃袋の全面戦争だ。
どちらも一歩も譲る気はない。激しい争いが何週間も続いた。
この戦いに終わりはない。
そう諦め掛けていた先日。僕はテレビで天気予報を見ていた。
台風8号「フランシスコ」が発生して九州に向かっているらしい。豪雨で苦しんだ九州に台風とは泣きっ面に蜂だな。
そう思った瞬間。
良心と胃袋の間で平和条約が提案されたのだ。
「被災地にふるさと納税しよう。」
僕は住む街を裏切っているのではない。被災地を助けたいのだ。
決して霜降り牛肉に目がくらんでいるのではない。被災地を助けたいのだ。
良心と胃袋がどちらも満足する案。それが被災地へのふるさと納税だ。
こうして良心と胃袋は手を取り合い、平和条約を結んだ。
これが俗に言う、
である。
ついに僕の体に平穏が訪れた。
残された問題は僕のウエストの肥大だけだ。
本記事は下記クラブのご協力を得ています。
面白い文章を書けるようにするクラブ - CAMPFIRE (キャンプファイヤー)