アディダスと結婚したい。
そう思ってるんじゃないかと疑うぐらい、アディダスを愛する先輩がいます。
僕のいる会社には社員の部活動としてバスケ部があって、そこで出会った先輩の話です。
バスケ部に入って初めて練習に参加した日のこと。
体育館に入ると、その先輩が立っていました。Tシャツ、短パン、バッシュ、靴下、リストバンド、これら全てがアディダスでした。
偶然に揃うレベルじゃないな。
瞬間的にそう思いました。
そこで聞いてみたのです。
「先輩はアディダスが好きなんですか?」
すると、
「アディダスは全然ちげぇんだよ!」
。。。違う?。。何と何が違うのか。
「ち、ち、違うってどういうことですか??」
「だから、アディダスは全然ちげぇんだって」
なぜ「違う」しか言わないのか。RPGの村人Aなのかと。そう思いましたが、初めて会った先輩にそんな事は言えません。
よくよく聞いてみれば、ナイキやアシックスと比べて、性能が段違いに良いのだ。そう言いたかったようです。
靴下やリストバンドにそんな性能差が出るのか信じ難いですが、なぜだかその日から先輩とは仲良くなれました。
別の日のことです。
仕事が終わって、バスケをしに体育館に行ってみると、一番乗りで先輩はいました。
先輩はなにやら猛スピードで走っては急ストップ。猛スピードで走っては急ストップを繰り返しています。
「せ、せ、先輩!何してるんですか?」
「アディダスは全然ちげぇな!」
だから、お前は相変わらず村人Aなのかと。そう思いましたが、先輩にそんな事は言いません。
と言うか、この頃になると「全然ちげぇな」だけで僕は先輩の意図を理解出来るようになっていました。
アディダスのバッシュは性能が良くて、上手く急ストップできる。そんな所だろうと思って確認してみると、正解でした。
なんだか先輩の親友になれた気分でちょっと嬉しくなりました。
ある冬の寒い日のことです。
バスケ部では練習後に飲みに行くのが恒例で、駅の近くの地下にある居酒屋にいつも行っているのです。
この時僕は新人だったので、お会計をする係でした。
飲み会が終わって、先輩達は階段を登って先に地上に出ていて、僕は会計を済ましてから追いかけました。
すると、いつもの声が上から聞こえてきたのです。
「やっぱ全然ちげぇよ!」
今回はなんの話だろうな。僕はニヤニヤしながら階段を登っていきました。
「このアディダスの耳当て全然ちげぇんだって!」
耳当てに性能差なんて無いだろ。そう思いながら、階段を登って顔を上げると、先輩の耳当てに描かれたロゴが目に飛び込んできました。
先輩!それアシックスですから!!!
Fin
本記事は下記クラブのご協力を得ています。
面白い文章を書けるようにするクラブ - CAMPFIRE (キャンプファイヤー)