研究成果を学会発表するためにアメリカに行った時の話です。
学会会場まで空港からレンタカーで行ったんですよ。土地勘が無いので当然ながらカーナビを使うわけです。
そのカーナビが中々の曲者でした。
彼の名は、
Never lost
なんて強気な名前なのかと。英語で"道に迷った"は"lost my way"ですから、このカーナビの名前を意訳すると、
「決して迷子にならない」
ですかね。
日本メーカーでは、こんな名前を付けられないでしょう。もし道に迷ったらどうするんだ!誇大広告だとマスコミに叩かれるぞ!という偉い人の怒声が聞こえてきそうです。
一方、技術大国のアメリカ。この名前は自信の表れです。高度な数学に基づいた最新のアルゴリズムが適用されているに違いありません。
大船に乗った気持ちで学会会場に向けてLet’s go!
とその前に、彼に行く先を教えないと。彼の呑み込みは早く、目的地はココ!と表示されました。ただ目的地は設定できたものの、地図に何も表示されないのです。日本のカーナビだと、地図画像に重ねて進むべき道が色付きで表示されるじゃないですか。それが出てこないのです。
技術に特化し過ぎてUI設計が疎かになったパターンだな。分かるよ分かるよ。あるあるだな。
そんな事を思っていると、「100m先を右に曲がって下さい」のような音声案内はちゃんと出ることが分かりました。
まぁ運転中はディスプレイを見るべきじゃないし、音声に従って進めば大丈夫だろう。目的地にたどり着ければオッケーオッケー、さぁ出発!Let’s go!
出発後、10分経過。
Never lost君、まさかの沈黙。
おい!地図に何も表示されてないんだから、喋ってくれないと何も分からんぞ!!
ディスプレイをタッチしようが、話しかけようが反応がありません。
ま、ま、まさか。お前、もう道に迷ったのか??
おい、どうなってるんだ!Never lost!返事をしてくれ!!
。
。
。
。
返事が無い。まるで屍のようだ。
どうやらNever lost君、無視を決め込むつもりのようです。謝ったら負けだという精神が叩き込まれているのでしょう。
道に迷ったなら、そう言ってくれと文句を言いたいとこですが、カーナビ相手に怒っても意味がありません。
困ったときは奥の手です。
技術大国アメリカの技術が詰まったiPhoneを取り出し、最新のアルゴリズムで動くGoogleマップを使うことにしました。
さすがは安定と信頼のGoogleマップ。1時間ほどで目的地付近まで連れて来てくれました。最初から通信料をケチらずiPhoneを使えば良かった。
やれやれ。アメリカの技術力もピンキリだな。そんなことを呟いた矢先、Never lost君が突然声を出したのです!!
「目的地周辺です。」
お前は何もやってない!!!
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