サイエンスの香りがする日記

実体験や最新の科学技術をコミカルに綴ります。

人もブナも同調圧力に負けている?なぜか重なる子作りの時期。

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日本は同調圧力が強すぎる。

 

そう批判する人がいる。だが、同調は必ずしも悪いことばかりではなく有益な時もあるのだ。



例えば自然界。

 

ブナの木は毎年種子を作るわけではなく、数年に一度まとめて種子を作る。

しかも森全体で同調して、同じタイミングで作るのだ。

 

それはなぜか。

 

同調圧力に負けて嫌々している?

 

そんな訳はない。

 

ブナたちは恐れているのだ。

自分の種子が動物たちに食べ尽くされてしまうことを。

 

種子を食べられたくない........どうすればいいか?

 

そうだ、動物たちを飢えさせて、個体数を減らそう。

そのために、ブナは数年間、種子を作らないようになった。

 

そして数年に一度だけ、動物たちが食べ切れないほどたくさんの種子を作ることにしよう。そうすれば、食べ残された種子が、無事に育つ。

 

これが飽食仮説だ1)。満腹仮説とも呼ばれたりする。

いくつかの考えられている仮説の中でも、有力な仮説である。

 

この手法では森全体が同調する必要があるのだが、そのメカニズムは明らかになっていない。

 

気象条件が関係するという説や、前回の記事で紹介した菌根菌ネットワークが働いているという説もあるキンコンキンを制する者は原生林を制す。 - サイエンスの香りがする日記)。今後の研究に期待したい。



さて、人間界。

 

森のブナのように、田舎の子作りも同調するのだ。

 

過疎化が進んでいる人口が少ない村では、数年子供が生まれない年が続き、突然ある年に5人生まれたりする2)

 

それはなぜか。

 

田舎の家庭では、こんな会話が繰り広げられている。



クリステラさん「隣の家の奥さん、今度の4月に出産らしいわよ。」

 

しんいちろう君「そうか、それはおめでたいな。」

 

クリステラさん「今から妊活すれば、うちも来年度中に子供が産めるわ。」

 

しんいちろう君「なんで急ぐんだ?.......そうか!子供がいた方が好印象で、村長選挙で有利ということか。」

 

クリステラさん「違うわよ。同級生になれるじゃない。」

 

しんいちろう君「同級生??........そうか!パパ友ママ友になれば、村長選挙で一票お願いしやすいということだな。」

 

クリステラさん「あなたはそれしか考えてないの?!田舎の村じゃ、同級生なんてなかなかできないのよ!」

 

しんいちろう君「そういうものか.......」



どこかの家庭に子供が生まれるという情報は、お母さんネットワークによって瞬く間に村中に伝わる。自分の子供の学年は1人だけという寂しい状況を避けたいお母さんは、このチャンスを逃さない。

 

こうしてお父さんの知らぬ間に家庭の子作り計画が書き換わるのだ。



同調圧力に負けているのではない。

 

人もブナも、子を思っての行動なのだ。



【注釈】

1)ブナにおけるマスティングの適応的意義とそのメカニズム

https://www.hro.or.jp/list/forest/research/fri/kanko/kenpo/pdf/kenpo46-2.pdf

2)田舎で林業を営む方からの伝聞。

 

 

本記事は下記クラブのご協力を得ています。

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