キンコンキンを知っている人は少ないかもしれない。
漢字で書くと、菌根菌。
なにやらトンチンカンな雰囲気の言葉だ。
菌根菌は土の中に存在していて、多くの植物の根にくっついて生活している菌である。
僕らの足に巣食う水虫菌みたいなもんだ。
いや、このたとえは適切では無い。
水虫菌は僕らに痒みしか与えないが、菌根菌と植物はWinWinの関係で共生している。
菌根菌は土の中にあるリンや窒素などを吸収して植物に与えている。一方、植物は光合成で作った炭水化物を菌根菌に提供している。
お互いに助け合って生きているのだ。
植物が水中から地上に出てきた5億年前頃から共生しているのだが、その共生関係には未だ謎が多い。
今日は、共生関係の役割の1つを解明した研究を紹介しよう(1)(2)。
人の手が加わっていない原生林を見渡した時に不思議なことがあった。
ある種の樹木、例えばマツの木の周りにはマツの木が集まっている。同種の樹木が固まりになって生育しているのだ。
一方で別の樹木、例えばサクラの木は逆だ。人の手が加わっていない場合、サクラの木の周りにはサクラの木は無い。異種の樹木ばかりが生育している。
生育する樹木の種類がコントロールされている?
原生林は弱肉強食の自由競争社会ではないのか?
どうやら原生林の入学試験はフェアではなく、得点調整が行われているようなのだ。
では、誰が調整役なのか。
ご想像の通り、菌根菌である。
菌根菌は土の中で菌糸という足を網目状に伸ばして、付近の樹木に住み着く別の菌根菌とネットワークを形成する。そして情報をやり取りするのだ。
マツの木の根に住む菌根菌は、近くに別のマツの木が成長しようとすると、それを助ける働きをする。
似たものを集めようと、入学試験の得点に下駄を履かせてくれるわけだ。
サクラの木に住む菌根菌は逆だ。近くで成長しようとするサクラの木の邪魔をする。
自分が特別。似たものの得点は減点だ。
菌根菌による得点調整の結果が、僕らが目にしている原生林なのだ。
地上だけ見ていると自由競争社会。
しかし地下に目を向けると、足を引っ張ったり、手伝ったり。ドロドロした、いやネバネバした関係が繰り広げられている。
人も樹木も似ているところがある。
大事な事はアンダーグラウンドで決まっているようだ。
【参考文献】
1)Kadowaki K, Yamamoto S, Sato H, Tanabe AS, Hidaka A, Toju H “Mycorrhizal fungi mediate the direction and strength of plant-soil feedbacks differently between arbuscular mycorrhizal and ectomycorrhizal communities” Communications Biology 1:196 (2018) https://www.nature.com/articles/s42003-018-0201-9
2)地下の菌類のネットワークが森林の安定と変化の原動力であることを解明 ―なぜ森林ではさまざまな樹木が共存でき、時間とともにその姿を変えるのか―
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2018/documents/181120_1/01.pdf
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